アケ美

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 アケ美とは、祖父がつけたらしい母の呼び名で、彼女の兄弟ですら、本名はうろ覚えである。何せここに発表するのを躊躇するほど、可愛い名でない。 とにかく、顔立ちは、本当に、美しいと、ふと見たとき、いつも思う。 眉間に深くしわをつけているが、それは、おそらく愛情によるもので、だから、いくら歪めても、不動の美を、私だけ、ため息がでるほど感じずにはいられない。 小さな頭の、額からいったんくぼんでからほどよい大きさの目をぱちぱちさせ、唇は薄くしまり、鼻がツンとして全体の具合をとる様は見事である。 母性に満ちた肩、頼りがいのある、と言ったら体格について誤った解釈をされそうなので補足すれば、西洋の絵画のようにただ包むといった様子でなく、区切れたひとつひとつの隙間に、全身の毛細血管に澄み届くような繊細な柔らかさをもって、それなのに、骨ばった鎖骨は、朝焼け雲のように光に忠実に、シックに輝いたりする。 身のみなの色素が薄い人で、しみが多いが、もとの薄さをすればちょうど良い厚みになるようで、瞳が、奥のほうで、鈴が揺れ、きらきらと鳴る感じに異常に光を帯び、
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