アケ美

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「―前略、朝四時半に起床、一番電車で梅田地下(大阪で最高の確率の売場)で買ってきました。一千万円が十八本も当たります。 十二月三十一日の抽せんを楽しみに。(大きいのがあたったらリベートもらうよ!) ミキ男 」 恋は決して盲目なんかでない。それをして、初めて、やっと、視界が、瞳孔が、開いて、目が輝くの。 やたらと敏感になるのも、実は、普段眠っている本来の能力というのが、脳みそがいつもより多めに働いていて、胸や腹なんかが締まる苦痛は、それの副作用じゃないだろうか。 恋人の関係は、恋仲とは限らず。 恋に続いて、叶えるとあって、その意味がもし、恋人を指すのなら、もうそこには絶望しかないのだから。 自分が絶望していることに気付かないというところの悲劇だ。と、書いたら、逃げ出したくなった。 転勤重なるミキ男。頑張っている。 大阪から東京へ、神奈川、東京、 どこもアケ美はついて行ったが、ミキ男の帰りも遅く、頼りどころ不在の空腹。 そこから健気に自立したのだが、当人は恋人を、頼りどころとしてしまうところの絶望に、一生気付かないから、後に泣き崩れることになるのだ。
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