出会い

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「ちさ?どしたの?ぼんやりして…あ!さては好きな人のことでも考えてたか~?」 にやっと笑って唯が言う。 「あ…え…ち、ちがうよ、そんなんじゃ…」 恋なのか何なのかわからない胸のざわつきを隠したくて、咄嗟に否定した。 「ま、それもそっか。まだ別れたばっかだもんね。ちさ、ごめん、無神経なこと言って」 「ううん、いいよ、唯。ただ、私ってどんな人が好みなんだろ?って考えちゃっただけ」 「あはは。何それ~」 「だぁって、私そんなに男の人と付き合ったことないもの」 実際、先日別れた彼が2人目だったし、中学、高校時代に好きになった人はいても告白なんてとてもできなかった。 高校卒業間近に告白されて初めて付き合った彼とは、2週間くらい一緒に帰ったりしたけれど、大学進学と同時にそのまま自然消滅してしまった。 思い出してみれば、「卒業」という甘酸っぱい雰囲気に流されていただけのような気もする。 「ちさ、とりあえず色んな人と会ってみたらいいんじゃない?ね?」 そう言われて何度か唯と一緒にいわゆる「合コン」に出てはみたものの… 「唯…私もういいよ~」 昼すぎの学食。 暖かい日差しの差し込む窓際の席で、この前の合コンの話をしながら買ってきたパンを食べ終わった私は言った。 「ちさの好みはいなかった?」 「ん~…そういうんじゃなくて、今はいいや、って感じかなぁ」 正直言って「彼氏が欲しい」と思ってるわけじゃないし、積極的に誘ってくる人を断るのも疲れたな、と思っていた。 「そっか…まあちさがそう言うなら」 「ごめんね、唯。せっかく気をつかってくれたのに」 「気にしなくていいよぉ」 唯はあはは、と笑う。 唯の笑顔は向日葵みたいで、周りを明るくする。私はそんな唯をうらやましく思う。私も唯みたいに明るくなれたら… 「あ、研究室に忘れ物しちゃったんだけど、ついてきてくれる?」 「うん、いいよ」 「ありがと!」
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