芋虫と蝶

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 何故生徒会室が此処まで威厳を持っているのか――答えはこの学校の制度そのものと関係しているのだけれど、それはとりあえず置いといて。 「はぁ、相変わらずでっかい扉よねぇ……。それじゃ、行きますか」 「うえぇ!?行っちゃうの、開けちゃうの!?」 「仕方ないでしょうが!女は度胸、そして愛嬌!ほら、あんたも覚悟決めなさい!」 「えぇ~」  ぶつくさ言いながらも、胡桃は私の隣に立った。お互い、経験上分かっているのだ――こういう時、流れに任せるしかないということを。  強めに扉をノックしてみるが、返答は無い。それを入室許可と受け取って、私はドアノブに手を掛けた。 「失礼しま……」 「胡桃センパ~イ!!」 「きゃあっ!」  扉が開いた瞬間、猛スピードで何かが突っ込んできて、思わず横に身をかわす。改めて目を向ければ、ワンコ君――神山書記長が胡桃に抱きついていた。 「やぁっと来てくれたンスね!待ちくたびれましたよ、もう!!」 「く、苦し……離し、て……」  どうやら力の限り抱き締められているようで、胡桃は潰れた蛙みたいに助けを求めている。だが、嬉しさ全開で見えない尻尾を振りまくるワンコ君に、その声が届く筈もなかった。
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