芋虫と蝶

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「琴ちゃん琴ちゃん、ヘルペスミー!!」 「それを言うならヘルプミーよ。今度はどうしたの?」  朝っぱらからやかましい救助要請。それはもはや挨拶代わりの習慣となっていた。  叫びながら抱きついてきたのは、幼なじみであり親友――音無 胡桃(オトナシ クルミ)。 別に彼女自身は何の変哲もない極普通の女子高生だ。 まぁ、ある一点を除いて、なんだけどね……。 「やぁっと見つけた。ったく、何で逃げやがった?」 「元はといえばお前のせいだろ。大丈夫だったか、音無?」 「宮津(ミヤヅ)先輩、抜け駆けはズルいッスよ!舟江(フナエ)先輩もッス、胡桃センパイびびっているじゃないですか!」  騒ぎながらズカズカ入り込んできたのは、美形2名にイケメン1名。ゲーム風に言うなら俺様系に敬語腹黒系、ワンコ後輩系といったところだろうか。彼らが踏み込んできた途端に、教室の温度が二度上がった。  そんな周りのテンションも気にせず、一直線に彼らは此方に――正確には、胡桃のところに向かってくる。ところが、当の本人は、私の後ろで捨てられた子犬のごとくブルブルと震えていた。
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