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拳ほどの球体が一つ、暗雲の中を右往左往しながら点滅を繰り返している。
球体は半透明色でその中心には米粒程の黒い核のようなモノがある。
十六歳の少年ーーフレイは一見すると不規則に点滅している球体を観察した後、焦土に胡座(あぐら)を掻いて地図を広げた。
目を砂埃から守る特注ゴーグルをぐちゃぐちゃ頭の天辺まで持ち上げる。
栗色の癖っ毛がゴーグルのゴムに絡んで痛む。何本か抜けたかも知れない。……まあ、いずれ抜けるモノだしな。そんなことよか、とフレイは辺りを見渡した。
そして、少しうな垂れる。
「ここら一帯もやっぱダメだな」
人の気配どころか生物の気配すら感じない。枯れてしまった木々が風に揺れているばかりだ。
フレイは年季の入った黒いジャケットの胸ポケットからペンを取り出し、地図に景気良く一線を引いた。
これでフレイがここに来た目的は達せられたことになる。
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