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「もう良いぞー! ここらで引き返す、戻って来いよ!」
フレイが大声で暗雲に呼び掛けると、先ほどまで宙を漂っていた球体が一変して、点滅を止めた。風に流されているわけでもないのにふらふらと、フレイの元に降りて来る。
「マークはつけた。ここでの仕事はこれで終わりだ。……聞いてるのか?」
聞こえているのかどうなのか、妙な軌道を描いて接近する球体を見ていると不安になる。
実際に通じていなかったケースは山程あるわけで。聞こえているのなら反応して欲しいとフレイは思う。
そんなフレイの思いが通じたのか、球体は返事の代わりに動きを止めて白から赤に色を変えた。モノを言えない球体なりの意思表示であるらしい。
ちゃんと聞こえていたようだ。
「しっかし……赤代の里もダメだったし、紅の町付近も今じゃこの有り様」
今後の事を考えると思わず深い溜め息が出る。
「もう行く宛なんかねぇし。アルテマもそう思うだろ?」
アルテマと呼ばれた球体は、しかし、今度は返事らしきものは返さなかった。赤く落ち着いた光を放ちながら、フレイの右腕に嵌っている一cm程度の楕円形の小石へと吸い込まれ――消える。
「あっ、吸収石に入っちまった……」
アルテマについてはまだまだ謎が多い。吸収石を自らの右腕に嵌め込んでからの付き合いになるが、その存在や存在理由は未だに分かっていない。とはいえ、一緒に居て分かったこともある。
アルテマは長らく外に出っ放しだったから疲れたのだろう。
本来居るべき吸収石に戻れば、半日でまた出てこれるまでに回復するはずだ。
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