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頭に乗せた特注のゴーグルを目に着け直し、次に頬を軽く二度叩く。叩くことで気合いが漲る。ような気がする。
「アルテマはさて置き、とりあえず戻って魔王さまに報告すっかな!」
そのためには来た道を戻る必要があるわけだが、フレイの後方には振り返って確かめるまでもなく、これまで辿ってきた荒野が永遠と続いている。
「……はあ」
自然と溜息が漏れる。
今回の調査でも何の成果も得られなかった。
またも魔王――パーシィの悲しむ顔を見なくてはならないのか。
彼女と交わした秘宝シマブラを持ち帰る約束は果たすつもりではあるものの、空振りに次ぐ空振り、これではパーシィを悪戯に悲しませているだけではないか。
フレイは人々から魔王として恐れられている幼げな少女を頭に浮かべた。本当は人間が大好きで、この一件に一番心を痛めているであろう少女の姿を。
「なにバカなことを今更俺は。帰るって決めたんだ!後は帰るだけじゃないか。……んで、帰ったら謝ろう」
幸か不幸か、パーシィへの謝罪文句を考えるのには十分な時間がある。
地図とペンを胸ポケットに仕舞って立ち上がる――フレイは立ち上がろうと足に力を込めたが、背後から思わぬ力が働いて失敗に終わった。
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