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「魔王に報告って事はあんた、魔王の居場所を知っているよね? 正直に答えなひゃい……さい」
一瞬、顎が痺れて唇を噛んでしまったクレハ。だけれども、言い直したから問題ない!
……うぅ。
「なんか後ろが騒がしいな」
フレイは痛む後頭部を気遣いつつ、ようやく小柄なナイフを握り締めて高ぶっているクレハに目を向けた。
ぐちゃぐちゃの短髪にゴツいゴーグルを着けた少年と、金髪で若干たれ目な少女の視線が交わる。
背の高いフレイがクレハを見下すこの位置関係。どこか間の抜けた男に見下されていると思うと無性に腹が立ってくる。
いっそナイフで切り刻んでやろうかとも思うが、この少年……隙がない。いや、むしろぶらんと立ち尽くしている少年の格好は隙だらけなのだが、なぜか攻撃の当たるビジョンが見えてこない。
それにしても、どうして人間の少年がこんな今となっては辺境の地に居るのか。
まさか私に差し向けられた何処ぞの組織の人間かも分からない。なんたって私には、魔を惹き付け、同時に魔を払う稀有な力があるらしいのだから。
どうにせよ、馬鹿っぽい面をした少年への油断は大敵であると、クレハの勘は告げる。
「今、ひゃいって……噛んだのか? 舌、大丈夫か?」
「っ!? い、いいから正直に答えなさいよ!」
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