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一年後。兄はあの女性を連れ、村に帰ってきた。村のあちこちで二人は結婚するんだと言われていた。そして、その予想は当たっていた。兄はやはり、両親に結婚の報告をするために、帰ってきたのだった。流石にこの時ばかりは俺も同席していた。そして、兄に渡された物がある。金だった。それも数え切れないくらい大量の。
「何だよ、これ?」
「金さ」
「そんなことは判ってる!何でこんな物を渡すのかと聞いてるんだ!」
「お前には学校に通ってほしいからさ」
何故かは判らない。けれどこの時に俺は何故か怒り狂うようにその袋を投げ捨て言った。
「余計なことしてんじゃねぇっ!」
長い反抗期だったんだ。父さんはこう言っている。だけど俺は、それで片付けてはいけない気がする。後に俺はその金で学校に通うことになったのだから。
三ヶ月ばかり、兄とマリーさんの幸せな生活は続いた。それだけしか続かなかったんだ。今はマリーさんもあの人はそういう星の元に生まれたのよ、と言う。彼女も辛いのに、俺を励ますためにだ。どれだけ、俺は情けない男なんだろうか。
そして、あの日を迎えた。その日は朝から雨が降り、誰も外に出ていなかった。俺も今日ばかりは、外に出ず自室で大人しくしていた。
昼飯時だった。母さんとマリーさんと手分けして飯を作っている時に父さんが異変に気づいた。
「何だか外が騒がしくないか?」
「野犬の群れでも現れたか?」
「かもしれないなぁ」
しかし、いくら経てど騒ぎは静まらない。さすがに変に思い父さんが様子を見てこようとした時
「ま、魔物だぁ!」
叫び声が聞こえた。父さんは咄嗟に剣を構えゆっくりと扉を開けた。
「よし。油紙だけ持って外に出ろ」
だけど、俺はその言葉に従わなかった。俺は父さんの横をすり抜け、声のした方向へ一目散に走り出す。後ろから父さんが必死に呼ぶ声が聞こえたけど聞かなかった振りをした。
魔物はすぐに見つけることが出来た。人の何倍もの大きさの異形の生物、魔物。それが人里に来ることも珍しいのに、このような巨大な魔物となると滅多にお目にかかることは出来ない。
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