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魔物は手当たり次第に目に入った物を壊し続けている。これ以上やられては、この後村に住めなくなってしまう。それだけは防がねばならなかった。咄嗟に目に入った多量の木材と岩を得意の魔法で持ち上げ、魔物の横っ面目掛けてそれらをぶつけた。案の定、魔物は狙いを俺に変え、馬鹿でかい拳を振り下ろしてきた。
「遅ぇんだよ!」
回避と同時に地面に減り込んだ腕の手首から肘辺りまで一気に斬る。吐き気を覚えるような叫び声を上げ、残った腕で俺を叩き潰そうとする。しかし、それも回避と同時に指の一つを叩き斬ることに成功する。さらに、怯んでる隙に斬った指を魔物の目に突き刺す。
気味の悪い叫び声を上げ、残った左目で俺を見てきた。
「ふんっ」
だけど、それに構わず足元に入り込む。そして、足の甲に剣を突き刺す。そして一気に引き抜き魔法の力を借り距離をとる。奴は両の腕、片方の足に浅くない傷を負った。
勝った。不意に生まれた気の緩み。“奴ら”はそれを見逃さなかった。
突然、地の中から現れた異形の生物、魔物。当然、俺は反応できなかった。
死んだ。
そう思い、防御もせずただあるがままに任せようとすべてを諦めたとき、突然後ろに引っ張られた。明らかに攻撃されたのは違う感覚。変に思い、目を開けると生まれたのは驚き。見た物は赤。嗅いだ物は鉄。触った物はぬめり。そして、判った物はそれが血だということ。目を見開きゆっくりと吹き飛ぶ見知った顔。一瞬、頬んだようにも見えた。次の瞬間には、地面を転がりながら猛スピードで吹き飛んでいた。
「アニキぃ!」
魔法を使い、すぐに助けに行く。いや、この時には冷酷ながら判っていた。兄はもう、助からないことは。魔物の攻撃を生身の人間がまともに受ける。これが何を意味するかなど、幼児でも判ることだ。
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