恋愛素質

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高校1年の夏、父親が出世して支社長となり、海外赴任が決まった。 母親はうれしそうに英会話を習い始め、危うくオレも海外へ連れ出されるところだった。 高校も真面目に行ってるし、金さえあれば一人でも暮らせると言い張って、なんとか日本に残してもらえた。 だって……無理。 外国なんて英語赤点のオレがいけるはずない。 英会話なんてヒアリングさっぱりだし、読むこともできないし、もちろん書くこともできない。 世の中、なんで英語の教科が必須なんだ? お隣の国の言葉でもいいじゃないか。 …って、韓国や中国の言葉も覚えられるとは思わないが。 まぁ、英語ができないから逃げたのが正直なところ。 言葉の通じない国で、何年生活するかもわからないなんて悍ましい。 鳥肌が立つ。 強盗なんかに襲われて助けを求めても誰も助けてくれないような気がする。 絶対嫌だ。 夏休み中に海外へと飛び立つ両親を見送り、オレは広々としたマンションで優雅に暮らした。 けど、その暮らしも1週間もすればなんか淋しくなってきて、2週間もすれば洗濯物溜まってきて。 学校が始まるとコンビニ弁当やお菓子の袋や、ジュースのペットボトルなんかのゴミの山ができあがっていた。 本気でやばいと思い始めたのは1ヶ月が過ぎてから。 着るものもないし、部屋汚いし、風呂も掃除していないし…。 金はあっても、さすがに家政婦さん来て下さいとは言えない。 しょうがなく初めて自分で洗濯機をまわした。 全自動の乾燥機つきので助かったと思う。 洗濯物を干せとかいうミッションは、寒くなって水が冷たくなってきた今は、さすがにこなす気にならない。 次はゴミの分別。 わからなくて、燃えないゴミにひとまとめにしたら、収拾車が持って帰らず…。 仕方なく母親が残していってくれた分別表を頼りにゴミを仕分ける。 こんなので本当に一人暮らしなんてできるんだろうかと思った。 うるさい親がいなくて快適かと思えば、家事すべてやってくれていたことの感謝と、たまには手料理が食べたいと思う一人暮らし。
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