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「は……、ははっ…、よぉ。藤崎」
渇いた笑い声しか出てこない。
もうなにがなんだかわからない。
ただ一つ言えるのは…
「オレのマンション燃えちまった…」
オレは今、藤崎の家にお邪魔している。
オレの住んでいたマンションからそう遠くないところに藤崎は一人で暮らしていた。
なんとか顔見知りに保護されたオレは、藤崎から渡された毛布にくるまり、ココアの入ったマグカップを両手で包み、どんよりと俯く。
どうすりゃいいのか頭が回らない。
「ごめんな、藤崎」
オレは何度繰り返して言っただろうということをまた口にした。
謝るしかできない。
こんな近くに住んでいたばかりにオレを拾ってしまった。
毛布とココアがこんなに身に染みるとは…。
泣きそうだ。
「別に。親、今、九州にいってるし。どうせここに一人暮らしだし」
藤崎はココアを手に、ダイニングの椅子に座り、そう言ってくれた。
受け入れる覚悟は出来ているような言葉に少し焦る。
「いやっ、オレも親、海外赴任で母親もついていって一人暮らしだったけど、親に連絡とれたら出て行くからっ」
「行く宛てあるの?」
うっ。
そんなの…あるほど交遊関係はない。
オレの友人なんてほとんどが親と同居、年上の一人暮らしなんて友人はいない。
「親の仕送り次第……かな」
オレは言いながら俯く。
家借りれる程度でいいから即金でほしいところだけど、親の連絡先も携帯なくした今じゃもう…。
頭痛すぎる。
ただ同じクラスなだけの藤崎に迷惑かけてるし。
しかも藤崎、女だし。
せめて男なら、もう少し遠慮なく言えたものを…。
さすがに…、ここでしばらく厄介に…なんて言えないよな…。
そんなことを思っていたのが読まれたのか、藤崎は言ってくれた。
「葉山がよければ、部屋も余ってるし、私は別に同居してもかまわないよ?」
ありがたいっ。いや、でも待てっ。
女と同居っていいのかっ?
「えっ!?いやっ、だからそれは…っ。……一応、オレ、男だし…。藤崎、女だし…」
言いながら、そういうのオレはあまり気にしないけど、気にされると嫌だなとか思ったり。
こんなこと安易に決められないだろ?普通。
そりゃものすごくありがたいお言葉ではあるけどっ。
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