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「イチコ、今日のお帰りは?」
「9時半?」
「いってらっしゃい」
オレはイチコを笑顔で見送る。
扉が閉まると携帯を開いて、ナオトに電話。
「行った…けど?マジでここくるの?」
「ショウヘイが今どんなところで暮らしているか見たいだけ。あと10分あれば着く」
ナオトの行動力は凄まじい。
10分っていうことはオレが電話する前から家を出ていたということだ。
やるといったらやる。
それがナオトだと思う。
この前の土曜に今住んでいるこのイチコの家に入れてと言われた。
もちろん断ったけど、ナオトはひいてくれず、イチコのいないときにってなって、今日実行に移すこととなった。
ある意味ここはオレの聖地。
あのケダモノは視察にくるようなものだ。
イチコはオレの特別ではあるけど、体の関係があるわけでもないし、至って普通の同居生活。
見せられないわけではないけど、イチコの家という思いはある。
なんていうか、イチコにオレ以外の男をここに入れてほしくないから、オレも入れないみたいな。
ナオトとイチコを会わせたくないとも思う。
ナオトは男のオレから見ても美形だし、女にモテるし。
こんなきっかけでイチコとナオトが関係持ったら……最悪だ。
イチコが帰ってくる9時半リミット。
チャイムの音にオレは玄関の扉を開ける。
「こんばんは」
「さっさと帰れよ、ナオト」
「今きたばかりなのに。お邪魔します」
ナオトは靴を脱いであがると、あたりを見回しながら奥へ入っていく。
むぅ……。やっぱりナオトがここにいるのは嫌だ。
オレとイチコだけの場所なのに。
「かーえーれ。かーえーれ」
オレはナオトに帰れコールを送る。
「ショウヘイ、さっきからやけに不機嫌だな。ショウヘイの部屋は?」
オレはオレが使わせてもらっている客室を指さす。
少しはナオトにも居心地の悪さを感じてもらいたいものだ。
ナオトは客室に入り、オレもそれに続いて客室へ入る。
オレのものなんてほとんどない。
けど、オレの部屋。
このままずっとここに住みたいくらいの居心地のいい場所。
そんな場所なのに、ナオトはいきなりオレをベットへ。
「ナオトっ。おいっ」
「したい」
率直に言い過ぎっ。
しかもここでっ?
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