恋愛素質

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男に追い付いた藤崎は、オレには見せたことのない恋する乙女な笑顔でそいつに挨拶している。 あ。5組の倉橋か、あれ。 へぇ。つきあってたのか、藤崎。 青春だぁな。 オレには一生こないような青春……。 桜満開の下で氷河期入ってるオレ、すっげ寒いんですけどっ? だから……、まぁ、彼女欲しくないとは……また違うんだよな、オレの場合。 普通に話せるんだから、たぶん普通にふれられるはずっ。 あのトラウマは……。 ……それでも……無理か。 告られたら迷って、結局振ってしまうんだし。 友達でいようとも言えない。 相手のこと考えると、それだけでオレがひいてしまう。 ぼーっと歩いてた。 目の前を歩く藤崎、倉橋カップルを見ながら。 だから気がつかなかった。 不意に人にぶつかった。 体に衝撃受けて、はっと気がつく。 相手は同じ高校の制服着た男。 オレにぶつかってその場に座り込んでしまったようだ。 「悪いっ。大丈夫か?」 オレは慌てて手を差し出す。 その男は座ったままオレを見上げる。 吸い込まれそうな、外人のような目の色。 美形だ。人形のように整い過ぎてる。 「あぁ。大丈夫。こっちこそすまない」 その男はオレの手をとって立ち上がる。 背はオレと同じくらいか、オレのほうがもしかして低いかもしれない。 うっわぁ……。こんな男、世の中にいるもんなんだな…。 うらやましすぎるぞ、その顔。 さっきの手も……女みたいな、だけど男の手。 きれいな手…。 って、やばっ! 危うく男に惚れてしまうところだった。 でもなでもなっ、たぶんそこらにいる女より美人だぞ、こいつ。 「同じ学校?何年何組?名前は?」 オレはこれをきっかけにまた友達増やそうと聞いてみる。 いや、この異種的な美形はやっぱり友達としてゲットしておくべきだと。 「2年特進理数。神崎ナオト」 そいつは答えた。 「オレは2年6組の葉山翔平っていいます。よろしく。…で、携帯持ってる?メアド教えて」 まるでナンパだ。 相手が相手なだけに。 神崎がこんな美形じゃなきゃ、目にもとまらなかっただろう。 気がつくと、まわりの登校する女たちのほとんどが神崎を見ていた。 神崎、目立ちすぎ……。 これが運命的な?出会い。 たぶんオレの人生、ここでまた狂った。
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