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神崎とメアド交換したものの、電話をすることもメールをすることもなかった。
学校で会っても、オレのまわりにはいつも友人がいたから、挨拶はするけど会話はそこまでしていなくて。
桜も終わった頃、初めて神崎にメールしてみた。
中間テスト乗り越えるだけの学力をオレに分け与えてください
なんて。
そうしたら神崎から電話がきて。
初めてゆっくり話したと思う。
気取ったやつなのかと思えばそうでもない。
どこか人と対話するのが苦手のような気もする。
オレのペースで話していると、神崎にオレの家で勉強を教えてもらえることとなった。
たぶん、そこらの女たちはかなりうらやましがることだろう。
土曜、神崎を連れて家に帰る。
途中のコンビニでいろいろ買い込んで。
勉強教えてとはいったけど、正直、勉強する気なんてオレにあるはずがない。
「ま、適当に座って、座って」
神崎を家に入れると、オレは買ってきたものをリビングの机の上に広げて食事。
「葉山はいつもこういうもの食べているのか?」
「まぁな。親もいないし。…あ、そうだ。オレのことショウヘイでいいよ。オレも神崎のことナオトって呼んでいい?」
「好きにどうぞ」
神崎がそう言ってくれるから、オレは神崎のことをナオトと呼ぶようになった。
ナオトの人づきあいの苦手っぽいところにつきあって、今日はナオトと2人きりということになる。
あれだけまわりに見られていれば、そりゃこうなるだろうなとも思う。
その顔がうらやましくもあるけど、その顔に生まれなくてよかったとも思う。
オレはテレビを見ながら、時折勉強。
ナオトは眼鏡かけて本気勉強モードだ。
眼鏡かけているのも……真面目そうでなかなか……。
はっ!
また危うく男に惚れてしまうところだった。
危ない、危ない。
「ベランダ借りていい?」
不意にナオトが聞く。
「なに?」
オレが聞くと、ナオトは制服のポケットから煙草を出してオレに見せた。
……真面目そうかと思えばそうでもない。
「父親使っていた灰皿あるからここで吸えば?」
オレは吸わないけど。
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