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ナオトが煙草を吸いながら勉強する姿を見ていた。
やけに慣れたように吸う。
その煙草を持つ手がなんかかっこよくて。
オレも1本もらってみる。
ナオトが火をつけてくれて、どう吸えばいいのかわからないオレは思いきりむせた。
ナオトが笑った。
たぶんオレに初めて見せる笑顔だっただろう。
「なに?ショウヘイって煙草バージン?」
ナオトがおもしろそうに聞く。
その顔でバージンとか言うなっ。
オレはむせながら思い、気を取り直してもう一度挑戦。
やっぱり無理だった。
けむいしっ。
「それ、やめておけば?」
ナオトが差し出す手に煙草を返す。
オレの吸った煙草を当たり前のように吸い、煙を吐く。
くそっ。ナオトがそんなふうに吸うから、オレも吸ってみたかったのにっ。
「ショウヘイっておもしろいね。俺みたいなのに関わってくるし。俺、見た目ほど真面目じゃないよ?」
見た目、真面目というか…、美形だぞ?
そう。美形の煙草吸う姿が、なんかかっこよく見えて……。
真似したくても煙草さえ真似できないし…。
オレとナオト、接点ってもしかして同じ学校なだけかも。
「ナオトは美形。頭もいいし。そういうのビモクシュウレイっていうの?」
「眉目秀麗…。使い方はまちがってはいないけど、俺はそんなんじゃない」
「じゃあ、どんなの?」
「……極悪非道だったりして」
ナオトがにっこり笑って言うから、とてもそうは見えなくてオレは笑った。
そんなオレの手にナオトがふれる。
何かと思えば、その煙草の火をオレの手に近付けてきた。
って、根性焼きですかっ?
「いやっ、無理っ。それ無理っ。オレ、根性ないからっ」
オレはナオトの手から逃れようとして、勢い余って後ろにあった棚に思いきり頭をぶつけた。
い…………っ。
あまりの痛さに涙目だ。
ナオトは大笑いしてくれて、悔しく思うけど痛みに言い返すこともできず…。
頭を抱えて転がりまくる。
痛い、痛い、痛いっ。
「ショウヘイ、本当におもしろい。ショウヘイって裏あるの?」
「そんなもん、ナオトに比べればないっ」
この美形の裏に隠された性格。
普段、めったに話さないから誰も知らないだけのような気もするけど。
かなり悪いと思うっ!
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