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あれから数日、高校生活にも慣れてきた。
あの時の彼の姿が、いつまでも頭から離れず、廊下などで彼を見かけるとついつい目が追ってしまう自分がいる。
この気持ちを恋と呼んでいいのか、あれを一目惚れとするのか、確信が持てぬまま彼への視線を注ぐ。
「サク、何見てんの?」
その声に振り向くと、中学からの友人の華乃が興味津々の表情でこっちを見ていた。
「ううん。ただなんとなくぼーっとしていただけだよ」
この気持ちの確信がもてず、華乃に打ち明ける事はできない。
いつか、気持ちがはっきりしたら華乃に話そうと思う。
きっと。
「ふーん?」
納得のいかない表情を浮かべた華乃だけれど、すぐに明るい表情に変えて
「ねぇ、ねぇ。部活決めた?まだならさ、テニスやろうよ!テニス!昨日兄貴から借りた漫画が面白くてさ、やってみたくなっちゃたんだよね」
と詰め寄ってきた。
部活ねぇ……
何にも考えてなかったなぁ。
あの人はどこにも部活に入ってないみたい。
帰りによく下駄箱で会うし。
あの人と一緒の部活ならすぐにうんって返事するのに……
なんて、華乃から少し後退ぎみになりつつ考える。
「サーク!他にやりたい部活あるの?」
華乃の言葉に首を振ると、
「よし、決まり!今からテニス部覗きに行こー」
と華乃に腕をつかまれてずるずると連れて行かれてしまった。
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