第1章

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休日に作ったブラウニーを佐藤さんに渡そうと会社に持っていった。 ―――佐藤さん、もらってくれるかな? 俺は、乙女か!と自分でツッコミしながらも、佐藤さんが来るのが待ち遠しかった。 配達にきた佐藤さんを確認すると、俺は緊張しながら話し掛けた。 「あのー…、昨日、お菓子作ったんですけど、もらっていただけますか?」 恐る恐る顔を伺うと、佐藤さんは言った。 「………大腸菌入ってない?」 失礼な!と、思ったが佐藤さんの照れ隠しなのはわかりきっていたので、俺は笑いながらブラウニーを渡した。 「形がいびつ」「包装がダサイ」等、言葉のナイフを佐藤さんは次々と俺に刺していった。 でも、最後の最後に佐藤さんは「ありがとう」と笑顔で会社に戻っていった。 俺は、それだけで幸せいっぱいになり、その日は気持ちよく過ごせた。
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