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「さて、じゃあおまえの説明をしてくれ」
さっきとは打って変わって穏やかな声で拓はそう訊いた。
「まずは名前からだな。何か難しい言葉言ってたが…もう一度言って欲しい」
『はい。では言いますからしっかり聞いていて下さいね』
女性も微笑みながらそう言う。
「任せろ。記憶力には自信あるんだ」
『ふふ、頼もしいですね。私の名前は布都御魂剣(フツノミタマノツルギ)です。覚えられましたか?』
「…スマン、もう一度頼む…」
せっかくカッコつけたのに台なしだった。
『布都御魂剣(フツノミタマノツルギ)です。もう言いませんよ?』
「…ああ、今度こそ覚えた。"ふつのみたまのつるぎ"だな」
『はいっ』
名前を覚えてもらったことが嬉しかったのだろう、その女性、布都御魂剣は笑顔になった。
「拓ー、ご飯よー」
1階の母親が呼ぶ声が聞こえるので拓は行こうし、ドアノブに手を掛けたところで一度振り向き、
「おまえ、飯は食うのか?」
『いえ、要りません』
「そうか。じゃあ悪いけど待っててくれ」
そう言って下りていった。
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