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部屋を出ると煙草を一本取り出して口にくわえ、火をつける。
エレベーターを使わずに非常階段を使ってホテルを出ると、昼間の蒸し暑さが悠里を襲った。
蒸し暑さに薄地のTシャツの襟元を指で摘んで揺らすと少しでも風を送り込もうとするが生温い微風は、更に暑さを煽る要素しか与えてくれない。
片手で携帯を開くとスケジュール帳を開いて予定を確認する。
「明日の19時から寺岡っておっさんとか…」
つまりそれまでは暇と言うわけだ。
久しぶりの休暇をどう楽しむか。
――夜は久しぶりにクラブでも行くかな…。
クラブは好きだった。
最近の流行りと言う煩いパンクロックが流れる部屋で男女が各々に踊り、酒を飲む。
彼らが望むのはその場かぎりの楽しさだ。
それは元来、人と深い付き合いが苦手な悠里には丁度良い。
「久しぶりに女とやるかな」
自分でも最悪なことを言っている自覚はあるが直す気は勿論ない。
セックスは悠里にとって生きていくために重要な手段であり、好きな人としたいなどと言う特別な感情はなかった。
「行くか」
短くなった煙草を地面に落とすと足で踏んで火を消す。
それからクラブの始まる時間まで適当に時間を潰すために悠里は歩き出した。
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