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小鳥遊 悠里。
それが悠里の本名だ。
最も先ほどの男を含め、名字は勿論、本当の名前を知っている人は少ないだろう。
去年の冬、20歳になった悠里は18歳になるまで孤児院で暮らしていた。
18歳を過ぎると厄介者よろしく僅かばかりのお金だけを与えられ、施設を追い出されたのは今も記憶に新しい。
高卒であることと、施設育ちと言うのが世間体よろしくないのか仕事はなかなか見つからず、今は属に言うニートをしている。
だから悠里には金を稼ぐ手段はなかった。
唯一幸いしたのは悠里の類い稀なるその容姿のお陰だろう。
金に近い茶色に脱色された髪は肩に付くか付かないかの微妙な線を辿り、元々色素が薄いのか、茶色の二重瞼の瞳は切れ長で、瞳を縁取るようにしてある睫毛は瞬きをするたびに影を落とし、妖しい色気を漂わせている。
綺麗に整った鼻筋もふっくらとした唇も甘い顔をした悠里の顔を更に強調させ、老若男女問わず心を惹き付ける魅力があった。
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