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「糸、引いてるよ」
突然、彼が言った一言。
その一言が私の脳に届くまで少し間があったが、
言ったことを理解した私は、
釣り糸の方へ視線を変えた。
釣り糸がかすかに引いているのが分かった。
私は少しあわてて釣竿を持ち、リールを廻した。
視線を元に戻したときには、彼はもういなかった。
これが、私が彼にあった一番初めだ。
その後、私はある事件をきっかけに彼と再会し、深い関わりを持つことになろうとは、
このときの私は
もちろん知らない。
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