カフェラテ―彼の存在その2―

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彼は言ったのだ。 「雨ですね」と。 その日は、雨が降っていた。 しかし、 私は昨日徹夜で仕事を終えて、それから帰るところだったので傘を持っていなかった。 仕方ないので店の屋根から屋根を傘代わりに走っていた。 信号待ちのために 近くの喫茶店の前で雨宿りさせてもらっていた。 そこにちょうど彼が喫茶店から出てきたのだった。 大分、私はずいぶんぬれていたと思う。 彼は私にハンカチを貸してくれた。 「ありがとう・・・ございます」 ためらいがちにハンカチを受けとり、適当に毛先や肩をぬぐった。 めずらしい人だなと思った。 見ず知らずの人にハンカチを出す。 いくら、ぬれていたとしても このご時世そんな親切をしようとする人はそうそういないんじゃないだろうか。 しかし、彼の態度はとても自然で それが当たり前のようだった。
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