カフェラテ―彼の存在その2―

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ハンカチ洗って返したいので、 名前と連絡先教えてください。 と、私は彼に言ったが彼は名乗らなかった。 その代わり、 こう言って、するっとそのまま信号機を渡って行ってしまった。 「たまに暇なとき、この喫茶店に寄ってみてください。 いるかもしれません。 ここ、 カフェラテがおいしいので」 その次の日の午後、私は喫茶店に行ってみた。 けれど、彼の姿は見当たらなかった。 私は、店員にカフェラテを頼んだ。 頼みながら、 カフェラテを飲むなんて甘党なのかなと思った。 短めに髪を切った 不思議な雰囲気の青年。 年は私と近そう。 でもどこか、年上のような気もした。 そんなことを考えているうち、 カフェラテが目の前に置かれた。 おいしかった。 甘すぎず、ミルクもそんなにきつくなく。 ふと、 「おいしいので」と言った時の彼の静かな笑みが浮かんだ。 それから、しばらく待ったが、 結局彼は現れなかった。 その後も何度がその喫茶店に寄った。 けれどもやはり、 彼の姿はなかった。
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