捨て犬―彼の存在その3―

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「名前」 彼がつぶやいた。 そして、独り言とも取れるくらいの声音で言った。 「名前考えよう」 う~んと腕を組んで 眉根にしわを寄せて考える。 自分も少し考えてみる。 白いから・・・マシュマロ、杏仁豆腐、しらたま・・・・・ああ、でもところどころ茶色い毛が混じってるから・・・・・しらたまあんみつ・・・・いやいやいや、まず食べ物から離れろようよ 自分・・・・・・。 ・・・・・だめだ。 こういうのは苦手。 しばらくして彼がぼそっと、つぶやいた。 「ぽち」 「なんで」 悩む必要あったの? 「犬だから、ぽち」 そう言って彼はにひっと笑った。 「・・・・・・・・ベタぁ・・」 自分はあきれたまなざしで 彼を見つめる。 彼は犬を抱き、付けたての名前を連呼した。 ずいぶん満足気だった。 変な人・・・。 自分は、腰を上げ、裾についた砂をはらった。 帰ろう。 彼と目が合った。 何も言わずに立ち去るのもあれだから、一言残して行くことにした。 「お子様」
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