捨て犬―彼の存在その3―

6/6
前へ
/28ページ
次へ
こんなに何も考えずにしゃべったのはいつぶりだろう。 しかも、見ず知らずの人に。 ・・・・・まったく知らない人だから、 かもしれない。 自分は人との会話があまり得意じゃない。 余計なことが頭をめぐり 言いたいことを満足に言えたためしがない。 しかし、彼には人と対面するとき特有の緊張感を感じなかった。 彼自身にそういう気質があるのかもしれない。 ・・・また会うときがあるだろうか。 いや、会わないだろう。 この道はもう通わない。 今日は、学校に通う最後の日。 「くす・・・」 彼の幼く笑った顔を思い出すと、 少し心が動いた。 そして、 その顔にもう一言 言いたくなる。 「あほ面」
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加