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俺、堂島佳那汰は動けなかった。
壁に張り付くように、必死に息を殺している。
壁と一体化するように、気配を消していた。
というのも、
「俺、海崎さんが好きなんだ…」
「田中くん…」
告白現場というものに鉢合わせてしまったからだ。
体育館裏というベタなシチュエーションである。
告白されている女子、海崎千夏は黒髪のボブの小柄な女の子だ。
ぱっちりとした目の、男子に人気がある女子と俺は認識している。
俺とは同じクラスで、俺は彼女と割と仲が良い。
【田中って…確かサッカー部の?】
壁から覗くと、確かにそうだった。
【あー、田中ドンマイ】
俺は心底同情した。
海崎の告白の断り方を知っているからだ。
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