その1

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俺、堂島佳那汰は動けなかった。 壁に張り付くように、必死に息を殺している。 壁と一体化するように、気配を消していた。 というのも、 「俺、海崎さんが好きなんだ…」 「田中くん…」 告白現場というものに鉢合わせてしまったからだ。 体育館裏というベタなシチュエーションである。 告白されている女子、海崎千夏は黒髪のボブの小柄な女の子だ。 ぱっちりとした目の、男子に人気がある女子と俺は認識している。 俺とは同じクラスで、俺は彼女と割と仲が良い。 【田中って…確かサッカー部の?】 壁から覗くと、確かにそうだった。 【あー、田中ドンマイ】 俺は心底同情した。 海崎の告白の断り方を知っているからだ。
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