その1

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「瀬田!」 教室に入り、開口一番に名を呼んだ。 本を読んでいた俺の彼女、瀬田卓弥が顔を上げた。 暗い茶色の髪のセミロングの、切れ長の目を持つ女の子だ。 めちゃくちゃ可愛い。 でも俺の彼女だから、そこんとこはよろしく。 「堂島、何?」 「今、海崎が告られてて…」 「あ、そう。つーことは来んのか」 本を鞄にしまい、瀬田は廊下を見つめた。 少しの間の後。 「たっくんっていうのは誰?」 田中がやってきた。 「あたし」 瀬田が立ち上がった。 田中は間抜け面で瀬田を見ている。 そりゃ女だったんだもんな、驚くよな。 笑顔を張り付け、海崎に訊ねる。 「海崎さん…」 「うん、たっくんだよ。卓弥だからたっくん」 「あ、そう…」 田中は苦笑していた。
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