その1

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「たっくんのボール、打てる?」 突然の海崎の言葉。 「野球ってこと?」 にっこりと、海崎は頷いた。 「私、たっくんに勝てる人が彼氏が良いの。田中くんはたっくんに勝てる?」 事態を理解した田中は、瀬田に顔を向けた。 「俺と勝負してくれる?」 「いいよ、じゃあ昼休みにグラウンドで」 田中は了承し、自分のクラスへ戻っていった。 すると、 「たっくーん」 すぐさま海崎は瀬田へと駆け寄った。 「ちな、あたし投げんの今週三回目」 「ごめんね、たっくん。迷惑かけて」 項垂れる海崎の頭を優しく撫で、瀬田は微笑んだ。 「田中…だっけ?あいつと付き合う気無えんだろ?」 「うん」 「なら任せな。勝つから」 そういうの、男が言う台詞じゃないのか? そう心の中でつっこみながら、俺は一時間目の用意を始めた。
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