その1

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一時間目は英語。 隠しもせず堂々と本を読む瀬田。 おい、隠せよ。 隠しもせず堂々と早弁をする我妻。 隠せって。 我妻の隣の席の海崎は、真面目に受けてはいるが、ちんぷんかんぷんらしい。 …俺の仲間だな。 俺そんな三人を観察していた。 特に、隣の瀬田を。 長い睫が伏せられ、影が出来ている。 細く、女にしては大きな指が頁を捲った。 高校一年生の冬から付き合い始めて早四ヶ月。 俺は瀬田を見ながら、しみじみと幸せを噛み締めていた。 ああ、可愛い彼女を持った俺は幸せだ。 すると、 「堂島見すぎ」 「…え!?」 俺の体が大きく跳ねた。 「何、その反応。気付かれてねーと思ったのかよ」 瀬田は苦笑しながら、本を閉じた。 「ごめん、つい」 今の俺の笑顔は、きっと引きつっていただろう。
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