6人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
突然の雨。気温は十分低いのに、雪ではなかった。
ずぶ濡れの私は傘も持たず玄関前で立ち尽くす。
「……は?」
垂れ落ちる滴が目に入って、よく見えない。
見間違いかな。はっと我に返って目を擦る。
でも目の前は何一つ変わらない。ということは、これは現実だ。
「あなた、誰?」
私は恐る恐る尋ねた。私の家に向かって突っ立っている一人の男。
その男はゆっくり――まるでスローモーション再生を見てるかのように――振り向いた。
「わっ……」
すっごい美形。それこそ雨に打たれているのも絵になっているほど――。
「……俺?」
「あんた以外誰がいるのよ」
拍子抜けの声で聞き返され、私は思わず突っ込んだ。
「お前こそ誰」
「……ここの住人ですけど?」
すっごいかっこいいけど、すっごいムカつく。何こいつ、馬鹿?
「あー、そっか。わりぃ」
男は再び私に背を向け――家の敷地内に入った。
「お邪魔します」
「ちょっと!」
私は男に飛びかかり、肩を掴む。
「何この新手の不法侵入。警察呼ぶよ?」
「いいよ、呼べば?」
あまりに冷静な返しに言葉に詰まる。
いやいや、相手はただのちょっと強気で馬鹿な犯罪者。怯むことないよね!
「俺、追われてんだ。ちょっと匿ってくんね?」
冷たい冷たい、晩秋の雨。これが、私達の出会いだった。
最初のコメントを投稿しよう!