‐桜ト月‐

2/5
前へ
/9ページ
次へ
桜舞う夜、姉が居る小さなお墓に行く 菊の華の匂いがツンと鼻がくすぐったくなった。 ゆっくりと歩く私は坂に差し掛かり小さくため息をついた、私はこの長い坂が嫌い。 着物で歩く上に長い坂 「‥でも、この上には絶景が広がってるのよね」 にこりと一人で百面相をしなが先程とは違う、軽やかな足並みで階段を登り鼻歌を歌う 小さい頃歳の離れた姉が嬉しそうに歌っていた。 《――さんはな、この歌好きなんやて‥私も好きなんや》 肝心の名前の部分が分からない‥ 何て言っていたっけ? コロン カラン 微かに響く下駄の音、 さらりと吹く静かな風 私は桜が舞い散るのを姉と重ねて見ていた。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

20人が本棚に入れています
本棚に追加