†魔法をかけられて†

3/10
前へ
/68ページ
次へ
 目の前を通り過ぎていく人々は、それぞれに行く先があるのだろう。  手に持っているものや身につけているもの、その際の表情……。  それらを見てその人が何をしている人で、これからどうしようとしているのかぼんやりと考えるのが、いつの間にか僕のちょっとした習慣になっていた。   どういう訳かそんなことを考えるのが楽しくて、毎日を仕事で明け暮れる僕にとってそれは一種の息抜きとなった。  そして今日もドーナツをひとつ食べ終え、カフェオレをすすりながらそれに勤しむことにした。  あの人は急いでどこへ向かおうとしているのか。  あの娘達は肩から大きなエナメルバッグを下げて……何か部活でもやっているのだろうか。  あの二人組はあんなに楽しそうにして、何をしようとしているのか。  そこまで考えて、僕は鮮やかな黄色のマグカップから口を離し、それを受け皿に置いた。
/68ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加