He is Cheshire Cat.

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「迷った」 呟いた声はほの暗い森の中へと、静かに霧散した。 右へ曲がって小一時間ほど経っただろうか。 俺、アリス・リデル、高校二年生は。 「完璧に、迷子、です………」 俺は決して方向音痴ではない。 知らない土地(と言うか世界規模、次元規模)だから迷うのは当たり前の事なんだ。 「どうすっかなぁ……」 自然と思い溜め息が漏れてしまう。 頭を抱えて地べたに這いずりたくなる気分だ、畜生。 何か道らしい道なんか何処にもないし。 無駄にじめじめしてて暗いし、暗いし、暗いし、怖い、し。 「…うわー嫌な事思い出しちゃったよ……」 何でこのタイミングなんだ、最悪。 ついてない、本当ついてない。 「シャーロットー、メアリー助けてー」 軽い感じで口に出してみても、内心の不安はハンパない。 でも、兄弟の名前を出してみたら、ほんの少しだけ気が楽になった気がする。
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