夢一

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  辺り一面に広がる暗黒の世界。   そうかと思えば、暖かい日差しが辺りを照らし、ぽっかりと春の草原を浮かべる。     またこの場所にやってきたのね。       いつもそう。   ここに来ると嬉しい気持で胸が高鳴る。     『―――……! メイミオよ! また会いに来たの!』   愛しき者の名前を呼び、名を名乗る。     会いたくて会いたくて仕方ない人。       最近夢でも会えていなかった。   美しい人。     『メイミオ、また会いにきてくれたんだね』   その人が姿を現し、大きな体で私を包んだ。   『―――……』     その人とは、時を過ぎるのを忘れてしまうくらい沢山の話をする。     しかし、いつも話した内容を忘れてしまうのだ。   とても重要な話をしているに違いないのに、起きたらその人の姿形、名前すらも忘れてしまうのが惜しい。     美しい宝石のような紅い瞳を持った人。         このまま夢なんて覚めなければいいのに。       そうしたら、この人とずっと一緒に居られるのに。    
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