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メイミオの寝起きは普段そんなに悪くはない。
しかし誉められるものでもなく、いつもヒバリにつつき起こされている。
ただ、彼女のヒステリーは、そう滅多な事ではない。
それを起こす度に決って、こう続くのだ。
「せっかくあの方の夢を見たのに!」
あの方、あの方……と、まるで恋に落ちた少女のように、彼女はその夢を見ては、夢から覚めるとあの方と引き離されたと、ヒステリーを起こすのである。
そして決まってヒバリはうんざりし、これまでとは打って変わって声を潜め、なだめる。
「また龍の夢ですか? あなたは龍郷国の王女なのですよ。禁忌である魔物を、ましてや龍を慕うなんて以ての他でございます。メイミオ様、どうか龍にお心を捕われないで下さいませ」
ヒバリの悲し気な声に、メイミオも我に還り謝る。
「ごめんなさい、ヒバリ。あなたにあたっても仕方ない事なのに。でもね、私もう龍なんて、一言も口にしてないわ」
「わかっております。あの方は、名前もあるんですよね」
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