夢一

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  メイミオの夢は、これまで何度も繰り返されてきた。   物心ついた時から見ていた龍の夢は、ここ半年はぱったりとなくなっていたものの、それ以前は月に二、三度の割合で繰り返されていた。   夢を見る度にヒバリはその話を熱心に聞き、しかしながら己の身分も認識させていた。   その事もあってか、王女自身も夢ごときに現を抜かす事はなくなっていったのである。     「久々に見たから動揺してしまったわ。頭がすっきりするような茶を煎じてちょうだい」   メイミオは哀しく笑って、夢を心の奥底にしまった。     龍郷国とは『龍の郷』という単純な意味ではなく、『龍の郷を制圧し建った国』という人の勝利を讃えた名前である。   レイゲンの伝記にある龍退治は、民衆の間にも誰一人として、知らぬものはいない程の知名度ある建国伝説である。   よって倒された赤い瞳を持つ龍は、嫌われ者であり、人間と対立するものとされた。
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