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『おかえり』
やや落ち着いた青年のような声が、アトリエに響いた。
『本当に毎日ここに来るよな、お前』
心底呆れているような声音に、僕はムッとしながら筆を手にして軽く上下に振った。
「名付け親に向かって、それはひどいんじゃないのか?」
そう。僕がアトリエを完成させた時、君は生まれてきたのだ。
僕からしてみれば、アトリエに宿る精神---精霊みたいなものだ。
確かに初めて出会ったときは心臓が止まるかと思ったが、慣れてしまえば何てことはない。
それに自分が作り上げたことによって生まれた存在なら、気味が悪いと思うのも筋違いのような気がする。
今となってはすっかり馴染んでしまっているのだから、自分の適応能力を心から褒めてやりたいくらいだ。
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