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《最初から分かっていた》
《ここにいることを》
「リン!」
崩れ落ちる彼女の体を急いで支える。
体には幾つもの切り傷。
全て私が今まで手にしていた刀で切り付けたもの。
「ミク姉……ごめんね……助け……てくれて…あり…がとね、気を付けて……」
「リン!嫌だよ……置いてかないでよ……私を独りにしないでよ!!」
今まで暖かかった彼女の体は次第に熱を失っていく。
『ふぅ……やはりこの程度か。まぁ良い、力は十分たまった。時は満ちたのだ!』
ミクとリンの背後、常闇に巨大な青白い炎が灯り中から成人男性の一回りも二回りも大きな頭蓋骨が現れた。
瞳は禍々しい赤色をした頭蓋骨、そいつは自らの野望の為リンを利用した張本人。
「貴様ッ!」
『そう吠えるな。負け犬の遠吠えにしか聞こえんぞ?』
確かに、今のミクは身体中ボロボロで左手に持っているレーザー砲のエネルギーも先程の戦いで尽きてしまった。
ましては今の彼女は勇気がない。
妹同然のリンを自らの手で殺してしまったのだから。
「もし望むなら、貴様だけは生かしておこう。そして我と共に新世界を創造しようじゃないか。我が王、貴様が王女だ。どうだ?」
心身共にボロボロの彼女にその言葉は余りにも魅力的だと言えよう。
幼い頃からの夢である王女になれるのだから。
危うく頷くその時…
(だめッ!)
懐かしい声が脳裏に響いた。
(魔王は貴女を利用しようとしているわ!絶対頷いちゃだめ。)
「リ…ン?」
(勇気を持って首を横に振って。お願い!)
「無理だよ……断ったらどうなるかと思うと……断る勇気なんて……私には無いよ……そこまで強く無いよ……」
(大丈夫!昔にも言ったけど、お姉ちゃんには勇気が固まっているんだよ。心の奥深くに!)
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