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倒してしまったイーゼルとキャンバスを元に戻して、私はもう一度溜息をついた。
すると、後ろからガタガタと不穏な音が耳朶に響いてきた。
びくりとして恐る恐る振り返ってみると、風が窓ガラスを割らんばかりに叩いていた。その外では丸裸の太い枝が左右にしなり、落ち葉やら何やらが飛んでいる。
「今日も冷えるなあ」
外の寒さが手に取るように分かり、私は思わず身震いした。
試しに窓を少しだけ開けていると、冷え切った風が容赦なく吹き込んで来た。
ほんの少し開けただけでここまでの勢いとは。
一瞬にして凍り付いたアトリエでそっと息を吐き出してみると、それは白く染まって消えていった。
こんな風に吐息が白く色付く季節・冬。
そんな冬本番、もう世界中どこを探したって雪を見ることは出来ない。
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