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「久し振りだな」
少し照れたようにあなたは口を開いた。
その後ろでは純白が舞っており、視界一面が銀色に染まっている。
「雪が降ったよ。多分、これが最後の“雪”になるんじゃないかって話」
少し淋しそうに俯いたあなたの背中に、二つの声がかけられた。
「なに神妙な顔してんだよ、ほら手短にしろ」
「いやいや、邪魔してやんなって。
遠い所にいる愛しい彼女のためなんだからよ~」
そんなやり取りに、あなたの顔が一瞬にして赤く染め上がった。
「うるせっ、カイトにロア!」
振り返りざまに、茶化されたあなたの顔に掌大の白い玉がぼふっと当たった。
半眼になって自分の顔に当たったそれを見下ろしたあなたは、すぐさま両手で“雪”をすくって固めたのを二人に向かって投げた。
「おーまーえーらー……。
許さん、覚悟しろっ!」
そう宣言したあなたは、その通りに手を休めることなく雪玉の嵐を繰り出していく。
つめてぇっ、と悲鳴を上げた二人に満足したのか、あなたは再びこちらに向き直った。
「こんなんでゴメンな。
本物を届けることは出来ないけど……せめて、この雰囲気だけでも伝わったらいいなと思う」
またな、と結んであなたは回復した二人と共に“雪合戦”を始めた。
降り積もった雪の上に倒れても、顔面に雪玉が当たっても二人とあなたは楽しそうに笑っていた。
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