†スロウ・スノウ†

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 立体映像(ホログラム)による動画が終わり、私はカードリーダーからそれを取り出した。  カードリーダー専用ムービーチップ。  現在となっては骨董品のそれが、何の手違いか私の元に届いた。  ちなみにカードリーダーが主流となっていたのは数十年も前のことだ。  過去からの郵便物に好奇心をくすぐられた私は、悪いと思いつつも中身を確認することにしたのだ。  すぐに骨董屋からカードリーダーを購入して。  そして、映像を見終えた私は一息ついてから窓の外に目線を変える。  私は、あなたが届けたかった相手ではないけれど。 「ありがとう……」  そう言いたかった。  この時代、この世界にないものを届けてくれたから。  確かにあったものだと教えてくれたから。  もう、触れることも見ることも叶わなくなってしまった“雪”というもの。  届けられた、遠い昔のあったかい純白の記憶。  この寒空から舞い降りてくることはないけれど、私の心には白くてやわらかいものがゆっくりと積もっていくような気がした。 †fin†
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