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だが僕は気づかなかった。運が……壊滅的に悪くなっている事に。
「あ、紐が……っていたたっ!」
「な……なっ、何してんだこの馬鹿!」
靴の紐を踏み、思いっきり転ぶ。
肘を擦りむいた様で、痛い。しかし泣き言をいってる場合ではない。
「チャンス到来っ……死ぬが良いですわ!」
久藤さんが明らかにやばそうな、見るからに違法っぽい……なんか武装されたスタンガンを持って飛び掛かってきた。
久藤さんのことだ。当たったら気絶じゃ済まないかもしれない。いや、済まない。
「くっ!」
僕はジャッキー・チェンの様に転がり突き出されるスタンガンをかわした……が、
ゴン!!
川に落ちない為のフェンスに激突。ついでに顔も擦りむいた。
「…って、フェンスが!」
フェンスが外れ、僕は上半身を川へ投げ出す。
何もできないまま体は川へ落ちていく――――
「くそ……っ!」
ガシッ!!
なんとかコンクリートの通路を右手の中指と薬指と人差し指で掴み、しがみついた。
下は川。十メートルは離れている……結構汚いので落ちたくはない。絶対にだ。
「フッフッフ、運の悪さを恨むんですね」
えぇ、この事態まで促した神を恨みます。
久藤さんは無慈悲にスタンガンを近付けてくる。もう駄目だ……そう思った瞬間、
「桜っ、早く上がれ!コイツはオレが抑えておくぜっ!」
沙羅が工藤さんを羽交い締めにする。
あぁ、素晴らしき友情に感謝する。やはり持つべきは熱い友達だ!
「よいしょっと」
結構苦しんだが、左腕も使ってなんとかコンクリートに上がる。
「よし、落ちやがれ!」
僕が少し離れたところで、沙羅が久藤さんの背中を蹴りとばす。
「覚えてやがれですぅ!」
ボシャァァァン!!と音を立てて久藤さんは落ちた。
うん、これは明らかに……
「やりすぎたな。下はあんまり綺麗な川じゃないし」
いや、そこじゃないでしょ。上がれるのは梯子で上がれるけどさ。
「うん。しっかし……ここまで運が悪くなってるとはね」
全く悪気の無い僕達。いや、ちょっとは反省しているよ?
でも、正当防衛だから。過剰とは言わさない。
「何がラッキーだ。属性強化なんて逆に不幸になるじゃねぇか」
「でも、これで完全に神の存在を肯定しなきゃいけないね」
神の存在も確信したところで学校に向かった……
が、勿論のごとく遅刻した。
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