無料で地獄巡り体験

5/16
前へ
/111ページ
次へ
「お前宛ての手紙だろうな」 「やっぱりそう思う?」 「あぁ……って、後10分で着かなきゃ遅刻だぜ!急ごう!」 たまに、この子が本当にヤンキーなのか疑う時がある。 無駄に口は悪いが真面目だからさ。学力はよろしくないのだけど。 で、沙羅は僕の手を握って走り出――― 「待てよ……オスが」 僕の後ろから聞こえる殺意の篭った声。 この世のモノとは思えない程恐ろしい声に、僕は思わず身震いをする。 「何お姉様の手を握っていやがるんですか、豚野郎」 女の子が僕の首根っこを掴む。 ……久藤 矢夜、女学生。 同じ学年。そして…………女専。別に同性愛を否定する訳では無いが、ここまでくると苦手だ。 さらに、段々と手は僕の頸動脈に近づいていく。 「は、春!やめろっ、桜が死ぬから!」 「やめません!今日こそコイツを殺します。えぇ、この場で!」 久藤さんは昔から知ってるんだけどね…… 何故か僕とは色々因縁がある、困ったことに。 「桜流、背負い投げ」 僕は久藤さんの制服の襟を掴み、たたき付けるのではなく放り投げた。 受け身が取れない前提で、どちらかというとたたき付ける方が痛いが……女の子だし、そこら辺も考慮してね。 どっちも痛いけど。 「痛ぁ!?」 久藤さんは飛んでいき、電柱に激突。 背中を打ち付けて、立てない状態。 「桜…………オレはお前の差別も区別も無いところが好きだぜっ!」 沙羅が抱き着いてくる。 まさか、ツンとデレでツンデレ属性が強化されているのか……? そんな所を好きになってくれてもまったく嬉しくないけど。 「許しません……許しますぇぇぇぇぇんっ!」 久藤さんが狂った様にポールペンやカッターナイフを投げ付けてくる。 クソッ、愛補正か立ち上がるのが速いな。 「危ないな……沙羅、逃げよう!」 「あ、あぁ!!正々堂々できないのは残念だが……マンガでも、主人公が敵に勝てなくて一回退くかやられるって事はよくあるもんな!」 コイツは、ホントさぁ。なんていうか……うん。 少年誌とか、好きそうだね。
/111ページ

最初のコメントを投稿しよう!

959人が本棚に入れています
本棚に追加