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その音はその場にいる者全員に聞こえてきた!
「……何だ? この音は?」
「これは……ギターの音だ! しかもフォークギター!」
「ついでに言うと、思い切り下手糞じゃねぇかッ!」
そう、それはギターの弦の音だった。
しかも、それはギターの音色として響いていたが、少なくとも音楽にはなっていなかった。
「あそこだ!」
兵士の一人が指をさした先。そこは3階建ての雑居ビルの屋上だった。
その上に立っている一人の男。
10代後半か20歳位の若い男。首には白いマフラーをなびかせて、慣れない手つきでフォークギターを弾いている。
「誰だテメェは?」
体格のいい兵士がその男を睨み、こう聞く。
男はギターの手を止め、不敵な笑みを浮かべた。
「人呼んで、さすらいのヒーローッ!」
そして――
「とぅっ!!!」
と叫ぶと同時に、ビルの外に付けられている非常階段を一気に駆け下りた!
「いや、そこは飛び降りる所じゃないのか!?」
『さすらいのヒーロー』と名乗る謎の男の出現に、兵士達は少し混乱した。先ほどまで虐げられていた少年少女たちも唖然とその様子を眺めているだけだった。
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