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「蒲生少尉、彼らは帰る気配もございません」
彼に付き添う兵士は、ふと彼にこう言った。蒲生は歩きながら一言、
「放っておけ」
と、返す。
そして彼はふと立ち止まり、東の空を眺めこう呟く。
「……テロを対岸の火事のように眺めていた日本人に、果たしてこのような事態が予測出来たものがいたのか……?」
「どうでしょうか? 仮に知ったとしても、自ら戦う術を知らない者が殆どかと」
「ああ、前の大戦から一世紀半、武器を捨てることが平和の近道だと刷り込まれてきたからな……」
蒲生のその言葉に、兵士はただ黙りこくるだけであった。
蒲生は更に続ける。
「世界各地で蜂起するテロリスト……奴等がいるから、我々『統合軍』がある。
奴等を武力で鎮圧しない限り、平和は訪れない。それも事実だ……」
AD2060、世界各地で蜂起するテロリストに対抗すべく、先進国は各国の軍隊を一元化し、世界レベルでテロリストに対する絶対的な力を確立させた。
これが、『国際統合軍』の始まりである。
だが、軍事大国であるアメリカ合衆国主導、先進国中心の編成に反発する勢力は更にテロ組織を過激化して行き、今や世界は更にその混迷を強めていた。
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