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やがて地響きと同時に巨大な人型の兵器がゆっくりと歩く光景が彼らの視界に入った。
巨大人型兵器はいつしか足を止め、小名浜地区に向かって立ち尽くしていた。
巨大人型兵器……身長8m位のそれは、この時代の主力地上兵器であり、『パワード・ギア』――通称『PG』若しくは『パワギア』とも呼ばれている。兵士の帰還率向上のために開発されたパワードスーツを重武装化した結果、それは既に『服』の領域を超過し、僅か半世紀の間に戦車をも上回る火力と機動性を兼ね備えた、強力な地上機動兵器となり得たのだ。
そして今、彼らの前に姿を現しているPGは、形式番号『WT-76』、名称『アクシア』。
日本製で、かつ統合軍極東方面軍の主力PGであり、その運動性能は世界一との評価が高い。
135mm対甲ロングライフルと対甲スティックで武装し、対車両、対PG共に高い性能を発揮する最新鋭PGである。
蒲生が眺めているいわき市小名浜地区は、3日前から『日本』ではなくなった。
日本に潜伏していた武装テロリスト『レッドライジング』が小名浜地区において大規模な武装蜂起を開始したのだ。
街の入り口をPGにより封鎖し、日本政府及び統合軍極東方面軍に対し、地区住人を人質にした小名浜地区の占拠を宣言した。
統合軍は直ちにPGを中心とする師団を現地に差し向けたが、人質がいる以上手出しも出来ず、互いに睨みあう形となって既に3日が経過していた。
「だが、腑に落ちないな……」
「何のことです?」
蒲生の言葉に兵士は思わず聞いた。
「この武装蜂起、『レッドライジング』単体で成し得るとは思えない」
「まさか……、バックがあると?」
「ああ、恐らく――」
蒲生がそこまで言いかけた時である。
「小隊長! 佐竹曹長が市民と諍いを起こしている模様です!」
「またあいつか……」
言葉を遮られた蒲生は憮然とした表情で歩き始めた。
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