第1章 月明かり

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ベランダに出ると涼しい風が吹き、虫の音が聞こえる。 夜空には真夏の暑さで疲れきった月がぼんやりと幻想的に夜雲を照らしている。 月の下には、最近建てられたばかりのマンションが並び、窓からのぼんやりとした光が暗闇をうっすらと照らす。 七年前の景色とは大分違う。 夏も終わりに近づき、日中との温度差が極端に感じられ、少し肌寒い夜風は夏の疲れを癒してくれる。 夜空を見上げるといつも想う。 なぜ人は空や星を見ると気持ちが和らぐのだろうか? なぜ心の奥底の一番深いところを刺激するのだろうか? それはきっと僕のおじいちゃんのそのまたおじいちゃんの…ようするに DNAに組み込まれたもので、僕には理解できない所にあり、また科学では説明のつかないことなんだろう。 そんなことを考えながら昇竜は、ぼけっと月を眺めていた。
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