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「…記憶あるのか…」
留火の声を聞いてから、優留が目を閉じる。
目の端から、小さな涙の粒がいくつも落ちていった。
「ううん、ない。…でもね…
まだ家族がいた頃、兄ちゃんに喰われそうになった事があるから…」
そう小さく言って流れる涙を拭うでもなく、優留は一度閉じた目を開ける。
ベッドに腰をかけた体勢のまま、留火は優留を見つめ、そっと倒れた耳と頬を順番に優しく触れた。
確かにそう、優留は成長していた。
一晩で最大に引き伸ばされた、腕や足の骨と筋肉は、今までよりもすこし細く長い手足を作っている。
こうやって、身体を横たえていても、成長が見て取れた。
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